青木源太と足立梨花がパーソナリティをつとめ、暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていくTOKYO FMの番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。6月19日(日)の放送では、文部科学省 初等中等教育局 健康教育・食育課長の三木忠一(みき・ただかず)さんに、「進化する学校給食の世界」をテーマに話を伺いました。
(左から)青木源太、三木忠一さん、足立梨花
◆子どもたちへの“食育”を推進
日本の学校給食は、1889年に山形県鶴岡町(※現在の鶴岡市)の小学校で始まったと言われています。佐藤霊山(さとう・れいざん)さんというお坊さんを中心に、貧しい家庭の子どもたちも学校に通って勉強ができるようにお寺のなかに小学校を作りました。しかし、貧しい家庭の子どもたちはお弁当を持ってくることができなかったため、お坊さんたちがお経を唱えて町を歩き、人々から分けいただいたお金や食べ物を使って、子どもたちに昼食を振る舞ったそうです。
こうして始まった学校給食は、その後、徐々に全国に広がっていき、太平洋戦争で一時中断されましたが、戦後1年経った1946年に再開。当時は、戦争によって国民全体が食糧不足に陥っていたため、子どもたちの栄養失調を救おうと、アメリカの民間団体などから援助物資を受けていました。
こうした流れのなかで学校給食を大きく飛躍させたのが、1954年に制定された学校給食法です。この法律は、学校給食及び学校給食を活用した食に関する指導の実施に関して必要な事項を定め、学校給食の普及充実及び学校における食育の推進を図ることを目的としています。
学校給食法が制定されたことにより、学校給食の実施率が一気に向上。1959年に実施した調査では、小学校での実施率は45%でしたが、15年後には97.1%に。中学校では、13%から86.2%まで上がりました。ちなみに現在は、小学校でほぼ100%、中学校も90%近くが学校給食を実施しています。
さらに、2005年には食育を推進する食育基本法が制定、2008年には学校給食法が一部改正され、「学校給食における“食育”の推進、学校給食における指導が教育の一環として明確に位置付けられた」と三木さん。これに伴い、現在の学校では、各教科などにおいて食に関する指導をおこなうことで、健康に良い食事や食品の生産、流通、消費などの理解を深めたり、給食を通して、マナーや健康に良い食事の取り方、安全や衛生に気を付けた準備、後片付けを学んで習慣化するなど、さまざまな工夫がされています。
◆「栄養教諭」の役割とは?
そんな学校給食について、三木さんは「栄養バランスの取れた食事の提供により、子どもたちの健康の保持増進を図るとともに、食に関する指導を効果的に進めるための『生きた教材』として大きな意義を有している」と声を大にします。
また、「生きた教材」である学校給食を管理して、児童・生徒へ食に関する指導を中心となっておこなっているのが“栄養教諭”です。栄養教諭は、児童・生徒の栄養管理及び指導をつかさどる先生のことで、2005年に創設されて以降、順次、公立の小中学校に配置されるようになり、2021年5月現在、全国に6,752人の栄養教諭がいます。
学校給食は、1日に必要とされる量の約3分の1を取れるように、栄養のバランスを考えた献立が作られています。「そうした日々の献立の作成や栄養管理なども栄養教諭の役割」と三木さん。
また、学校給食には“食育”の役割もあり、近年は献立にもさまざまな工夫がされています。例えば、福井県福井市の小学校では鹿肉カレーが提供されています。これは、野生鳥獣による被害の現状と捕獲したイノシシや鹿を食肉として有効活用する意義について学ぶ一環として考えられた献立だそう。また、神奈川県愛川町の小学校では、東京2020オリンピック・パラリンピック開催前に月に1回世界各国の料理が提供されたそうです。
これ以外にも、給食の時間に校内放送などを使ったり、家庭科や保健体育、社会科などの各教科において、担任の先生などと連携して食に関する指導も実施しています。
例えば、小学6年生の社会科の授業で小野妹子が持ち帰ったとされている「はし文化の伝来」を扱い、食文化としての「はし」を学習し、学校給食でも、それにあわせて「はし」の使い方を指導することで、社会科の内容について、さらにはマナーについても学ぶといった指導事例も。
また、教育に関する資質と栄養に関する専門性を活かして、教職員や家庭、地域との連携を図りながら、食に関する指導と学校給食の管理を一体のものとしておこなうことによって、「教育上の高い相乗効果をもたらすことを職務としている」と言います。そのため、各教職員とともに授業をおこない、教科を横断して食に関する指導をおこなっています。
栄養教諭の役割はこれだけではありません。例えば、偏食、肥満、食物アレルギーを有するなど、食に関する健康への課題を抱えた児童・生徒には、個別の指導をおこないます。特に偏食や食物アレルギーには、きめ細やかな指導が求められるので、保護者からの個別の相談にも対応し、教職員や家庭とも連携します。
なお、栄養教諭になるにはいくつか方法がありますが、なかでも大学における所要単位の修得によって栄養教諭普通免許状を取得するのが基本です。栄養教諭の配置数は年々増えているものの、一方で配置には地域による格差も見られるとか。
そうした課題に対して、「引き続き、栄養教諭の配置促進に向けた取り組みを進めていきたい」と三木さん。そして、「子どもたちの健康と豊かな心を育むために学校給食の充実と学校での食育の取り組みを進めています。ぜひ、ご家庭でも一緒に食事をしたり、料理をしたり、季節や地域の料理を味わうなどして、食育を実践してみてください」と呼びかけました。
今回の話を聞いた足立は「“食育”の大切さ」を痛感した様子。「食を通して、国の事情やマナー、健康についてなどさまざまなことを学べる。改めて給食は“生きた教材”なんだと感じました」とコメント。
青木は、学校給食において大きな役割を担う「栄養教諭」に着目。学校給食の企画をはじめ、食に関する指導など、多岐に渡るその役割について触れつつ、「今後も増えていきそうですね」と話し、栄養教諭のさらなる配置促進に期待していました。
(左から)青木源太、足立梨花
----------------------------------------------------
▶▶この日の放送内容を「radikoタイムフリー」でチェック!
聴取期限 2022年6月27日(月) AM 4:59 まで
スマートフォンは「radiko」アプリ(無料)が必要です。⇒
詳しくはコチラ
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
----------------------------------------------------
<番組概要>
番組名:青木源太・足立梨花 Sunday Collection
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:青木源太、足立梨花
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/collection/