本部長・マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。
6月8日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと三井住友DSアセットマネジメント株式会社フェローの宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「受け入れ再開の“インバウンド”と“観光ビジネス”の重要性」というテーマでお話を伺いました。
(左から時計まわりに)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保
◆日本における「観光資源」は貴重な収入源
浜崎:今回は、「受け入れ再開の“インバウンド”と“観光ビジネス”の重要性」についてお話しいただけるということですが。
やしろ:インバウンド規制の緩和が今月6月から始まりましたね。
宗正:6月1日からは海外からの入国制限、いわゆる水際対策ですが、入国者数の上限引き上げや空港での検疫対策の見直しなど、大幅に緩和され始めています。
そして、6月10日からは、ついに外国人観光客の受け入れ再開です。今後はその数も段階的に緩和される見込みということで、街中で見かける海外旅行客の姿が、今後のウィズコロナ生活の象徴になるでしょうね。
やしろ:コロナ禍前は、多くの外国人の方が日本に来ていました。ところで、日本政府が観光ビジネスに本格的に取り組み始めたのは、いつ頃からだったのでしょうか?
宗正:国土交通省の外局として観光庁が設置されたのが2008年(平成20年)です。この頃からですよね、「観光立国」というものを国全体で意識し始めたのは。当初、日本政府が目標として掲げたインバウンド数が、年間1,000万人でした。日本の人口の1割弱ですから、かなり大風呂敷を広げたなと感じた記憶があります。
やしろ:それは、あまりにも無理な目標だろうと。
宗正:ところが2013年(平成25年)には、早くもこの目標を達成してしまいました。日本はエネルギーと言えるほどの資源もなく、少子高齢化も進んで人口は減る一方です。そういう意味では、観光資源は貴重な収入源。インバウンドという言葉が使われ始めたのもこの頃からです。
やしろ:そう言えば、「インバウンド」が流行語大賞にノミネートされたりしていましたよね。
宗正: 2015年のことですね。残念ながら大賞の受賞は逃しましたが、受賞したのは「爆買い」で、やはりインバウンド関連でした。同じく2015年には、インバウンド数が日本から海外に出掛けるアウトバウンド数を45年ぶりに上回りました。
当時の私は全国47都道府県を講演会で飛び回っていましたが、インバウンドの急増で宿泊先のホテルがなかなか取れない状況。宿泊先をまず確保して、そこから講演会のスケジュールを決めるという、言ってみれば本末転倒な動き方。インバウンドの勢いに振り回される日々でしたね。
やしろ:当時は2020年に東京オリンピック・パラリンピックも控えていたので、そのままの勢いでインバウンド数は増え続けるという見方だったんですよね。
宗正:当然のように目標達成と大多数の人が思っていました。2015年には年間のインバウンド数も1,973万人を突破していましたから。政府も2016年の春には、2020年のインバウンド目標を4,000万人に、2030年のインバウンド目標を6,000万人に上方修正したほどです。
当時は、今ほどではないのですが、円安も進んでいました。つまり外国人旅行客がお買い物をするには非常に良いタイミングであると。これはインバウンドの大きな増加要因です。ところが、そんな矢先の新型コロナでした。
◆観光ビジネスは日本の大切な輸出産業
やしろ:今は振り出しに戻った感のある日本の観光ビジネスですが、コロナ禍前の当時の状況が分かる数字をいくつか教えていただけますでしょうか。
宗正:コロナ禍直前の2019年の日本のインバウンド数は、約3,218万人でした。
やしろ:すごい! 2020年目標の4,000万人は、おそらく達成していましたね。
宗正:そうですね。これはドイツ、イギリスに次いで世界で第11位です。同じ年の日本の観光ビジネス収入は約460億米ドルで、これはイギリス、イタリアに次いで世界第7位です。
外国人観光客が日本に来て使った2019年のインバウンド消費額が約4兆8,000億円。1人当たりに直すと約15万8,000円です。日本人の宿泊旅行平均が約5万5,000円ですから、比較すると約3倍の消費額。
やしろ:僕らもそうですけど、海外に行ったときの方が気分も解放されて、いろいろ買ったりしますからね。
宗正:インバウンドの経済効果の高さが伺えますよね。そして当時、2019年は中国からの観光客が伸びに伸びて、ついに累計で900万人台を達成しました。
1位の中国に2位の韓国、そして台湾・香港をこれに加えると、インバウンド全体の約7割が東アジアからでした。時差もほぼなくて距離も近い。東アジアの人にとって、日本が海外旅行先の定番になったのは自然な流れでした。
ただ、逆を言えば中国って「ゼロコロナ政策」を今も続けていますよね。制限が厳しい間は、インバウンドの数がなかなか戻らない可能性もありますよね。
やしろ:数字の大きさから見れば、観光ビジネスは日本の大切な輸出産業と言っても過言ではないですね?
宗正:外国人が外貨を日本に落とすという点では輸出と同じですよね。2019年に日本国内で海外旅行者が使った額は、約4兆8,000億円。これは何と自動車・化学製品の輸出額に次いで第3位です。
自動車が12兆円で、化学製品が8兆7,000億円、次いで第3位が観光収入。これほどまでに大きな輸出産業が、新型コロナの感染拡大で2年半もの間、奪われてしまっていたということです。
◆世界全体から見ても「観光ビジネス」は有望産業
宗正:この2年半、コロナ対応と経済対策の両立が必要だということを私たちは認識させられました。日本の人口は2008年がピーク、そこからずっと減少が続いています。つまり、国内市場だけを相手にして日本が存続するということは、明らかに無理なんです。
観光ビジネスは、お話ししたようにコロナ禍前までは拡大の一途を辿っていました。そういう意味では、コロナが一旦落ち着けば、これからも市場の拡大が見込まれる有望な分野だと思います。
世界全体から見ても、観光ビジネスは有望なんです。2019年の世界の旅行者数は、約14億6,000万人。2010年が約9億5,500万人でしたから。
やしろ:すごい上がり方をしていますね。
宗正:日本だけではなくて、世界全体で見ても観光ビジネスは、大きな役割を担っています。
やしろ:今、かなり円安じゃないですか。この円安の状態のまま、インバウンドで外国の方が日本に行ってみようかなっていう流れがつくれると良いですよね。日本でいっぱいお金を使ってもらうと。
宗正:そうですね。ただ、飛行機の燃油サーチャージの上昇や、先程お話した中国のゼロコロナ政策も続いています。その辺りの影響が気になりますよね。海外からの旅行者と身も心も触れ合っていた、あの頃が懐かしい限りです。
やしろ:僕はよく新宿に行っていましたね。コロナ禍前は世界中から人が集まっていた魅力的な場所だったので。
宗正:1日も早く当時の状況が戻ってくることを経済の観点からも期待したいですね。
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<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月~木曜17:00~19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ~)
パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保
番組Webサイト:
http://www.tfm.co.jp/sky/