笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの番組「DIGITAL VORN Future Pix」。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。7月9日(土)の放送は、ヤマハ株式会社 代表執行役社長の中田卓也(なかた・たくや)さんをゲストに迎え、お届けしました。
(左から)中田卓也さん、笹川友里
中田さんは、1958年生まれの岐阜県出身。1981年、慶應義塾大学法学部卒業後、日本楽器製造(現・ヤマハ)に入社。以後、一貫して電子機器や電子楽器の商品企画や開発に従事。PA・DMI事業部長、取締役執行役員、アメリカ現地法人社長などを経て、2013年6月に代表取締役社長就任。2017年6月から現職に就いています。
◆巣ごもり需要で楽器を手にする人が増加
ヤマハといえば、楽器やオーディオ製品を手がけるほか「ヤマハ音楽教室」なども展開している総合楽器メーカーで、今年で創業135年を迎えます。
中田さんは、1981年に新卒で入社以降“ヤマハ一筋”。アメリカに駐在するまで、「本社のある静岡県浜松市で、ずっと商品の企画や開発に携わってきた」と話します。また、入社してからの四十数年で「音楽を取り巻く環境が大きく変化していきました。レコードの時代からCDへと移行して、そこからiPodをはじめとする携帯型デジタル音楽プレイヤーに進化を遂げるなど、音楽の聴き方がずいぶん変わった」と語ります。
楽器のたしなみ方についても「ピアノなども、昔はアコースティックなものしかなかったが、デジタル仕様の物が出てきて、音量を自由にコントロールできるようになり、時間などを選ばずに演奏できるようになってきた。最近ではネットワークの技術を使って、離れていても合奏できるようにもなり、ずいぶん変わった」。さらに、コロナ禍で在宅時間が増えたことによる“巣ごもり需要”で「“楽器演奏をもう1回やってみよう”という人や新たにチャレンジする人がものすごく増えた」と変化を感じている様子。
◆「SYNCROOM」とは?
“ヤマハブランド”は世界での評価も高く、アメリカやヨーロッパ、中国、新興国など様々な地域に輸出されています。「楽器や音楽教室はもちろんのこと、コンサートで使えるような業務用のものから家庭用に至るまでの音響機器も出しています。もっと変わったところでは、インターネット接続に必要なネットワーク機器、ルーターはけっこうなシェアを占めています。身近なところでは、弊社の商品がコンビニのネットワークを支えている」と中田さん。また、ヤマハのような業態の会社は「海外にはないですね。世界で唯一だと思います」と胸を張ります。
また、コロナ禍となってオンライン会議やリモートワークなどの新しい働き方や生活様式が浸透してきましたが、ヤマハもネットワーク環境や技術を駆使した「SYNCROOM(シンクルーム)」というサービスを展開しています。
これは、複数の人がそれぞれの自宅などから音楽のオンラインセッションを楽しめるというもの。オンライン会議では、通話が途切れたり、やりとりにやや遅れが生じたりすることがありますが、ヤマハ独自の技術を駆使して遅れを極小化した「SYNCROOM(シンクルーム)」を使用することで、オンラインセッションが実現可能に。現在プロアマ問わず楽器を演奏する多くの人たちに利用されています。
◆ドイツの大学がヤマハの技術を採用!?
新型コロナが猛威を振るっていた頃、密を避けるために、ヤマハ音楽教室もオンラインによるレッスンを開始。そして“もっとヤマハらしいことを”との思いから、“離れたところでも実際に弾いたピアノ演奏を再現できるシステム”を活用します。
この技術について、中田さんが「ある演奏をデジタルデータに置き換えて、それをインターネットを介して送ると、届いた先のピアノでそのデータの音が鳴る仕組みです」と解説します。
さらにドイツの音楽大学がヤマハの協力のもと、入試の際にこの技術を採用。コロナ禍で国をまたいだ移動ができないドイツ以外の国の受験者のために、自身が演奏したデータをドイツの音楽大学へ送り、この技術で再現したほぼリアルタイムの演奏をドイツの教官が聴く、という形の実技試験を実施しました。
とはいえ、実現に向けて「ポイントは“どれぐらい再現できるか”ということと。記録するためにセンサーを仕込むのですが、これが“(鍵盤の)タッチに影響を与えてはいけない”という高いハードルがあった」と言います。
その演奏が合否を決めることになるため、受験生にとって人生を大きく左右するだけに「試験を受ける人たちにとっても、納得できるだけのレベルの再現性がなければならない。なかなかチャレンジングなテーマでした」と振り返ります。
ちなみに、この“データを取り込んでピアノ演奏を再現する技術”は、実は40年近く前に開発されたもので、「年々再現性を高めていったものにネットワークの技術を付加して、遠隔地でも精確に再現できる機能に昇華させました。離れたところで合奏する技術自体も(コロナ前に)開発していたんですけど、実験レベルだった。だけど、コロナ禍でみんな困っているから『サービスとして出しちゃおう!』ということで、(開発スピードを)加速させて進めた」と言います。
最後に中田さんは、ヤマハのこれまでの成果について「さまざまなことにトライして、いろいろな課題を克服してきた評価は、かなり高いレベルでいただいている」と胸を張りつつ、「こうした技術をさらに進化させることで、いろいろな場面で役立つようなサービスに変えられるのではないか、という手応えを感じています」と話しました。
次回7月16日(土)の放送も、引き続き中田さんをゲストに迎えてお届けします。ヤマハのデジタル戦略や新しい時代を見据えたサービスを生み出す秘訣など、貴重な話が聴けるかも!? どうぞお楽しみに!
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聴取期限 2022年7月17日(日) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/podcasts/futurepix/