TOKYO FMで月曜から木曜の深夜1時に放送している“ラジオの中のBAR”「TOKYO SPEAKEASY」。11月10日(火)のお客様は、浅草キッド・水道橋博士さんと、放送作家・細田昌志さん。
細田さんが取材・執筆に10年を費やし、水道橋博士のメールマガジン「水道橋博士のメルマ旬報」の連載で話題を呼んだ本格ノンフィクション「沢村忠に真空を飛ばせた男―昭和のプロモーター・野口修 評伝―」。今回の放送では、10月29日(木)に発売された同著にまつわる話が次々と飛び出しました。ここでは、“芸能のルーツ”や、細田さんがビートたけしさんにぶつけた“出会い頭の質問”について語りました。

(写真上から)水道橋博士さん、細田昌志さん
◆名乗ることもなく、挨拶も何もしていない人が突然…
細田:博士も尊敬してやまない(ルポライター)竹中労さんも「タレント帝国」という本で書いていますが、芸能プロダクションには、さまざまなルーツがあります。浪曲からきているルーツもあるし、戦後のジャズのルーツ、米軍キャンプのルーツもある。戦前・戦時中の軍隊慰問も1つのルーツ。
水道橋:そうだね。浪曲の立ち上がりは、そういう浪曲興行だし。淡谷のり子さんとかね。あとは(キックボクシングを創設したプロモーター・野口修さんが)五木ひろしさんをプロデュースしたり。まずはファミリービジネスとしてボクシングをやるけど、その後に芸能をやると。
細田:そう。“俺らはやっているぜ”っていう意識があって機能していたから、後に芸能にいった(流れも)ものすごくわかりますね。
水道橋:野口修さんの弟・野口恭さんは、日本(フライ級)チャンピオンにもなったプロボクサーでね。ただ、この本のなかで野口恭の白眉なところや試合について語る人がいないと言うので、ボクシングマニアの(片岡)鶴太郎さんに聞いたんだよね。
細田:はい。でも「俺、見てないんだよ。たけしさんが詳しいと思う」とおしゃっていて。たけしさんなんて知り合いでもないし、聞きに行けないよ……と思っていたら偶然、僕がこの当時、構成作家として携わっていて、博士も出演している(TOKYO MXのバラエティ番組)「バラいろダンディ」に、たけしさんが映画の宣伝で来られて。“これで話が聞ける!”と思っていたら、打ち合わせをする時間もなくて、ダダーっと来て、ダダーっと帰るようなスケジュールで。
水道橋:しかも取り巻きがいっぱいいるしね。
細田:でも、ここで話を聞かないと後悔するなと思ったんです。
水道橋:そうしたらエレベーターでね。
細田:博士、その様子を見ていたんでしたっけ?
水道橋:現場にいたよ。(細田くんが)自分の名前を名乗ることもなく、きちんと挨拶も何もしていない人が突然……。
細田:「すみません」って言って、「あの師匠、野口恭の試合をご覧になっていますか?」って、いきなり聞いちゃうという(笑)。
水道橋:あのね、「野口恭」って突然言われても、50年以上も前の話だからね。
細田:そうです。でも、たけし師匠が「左だろ?」って返してくださったんです。あれにはびっくりしちゃってね。
水道橋:俺は、何を聞いているのか分からなかったので、そこで(たけし師匠が)「左だろ?」って。意味がわからなかった。
細田:普通、「ご覧になっていますか?」って聞いたら、「観てるよ」か「観てないよ」って返ってくるか、もしくは「お前は誰だ?」(と言われるかと思っていたので)。
水道橋:そうそう。「お前は誰だ?」が正解(笑)。
細田:「お前は誰だ?」って言われて、つまみ出されるのが関の山だったのに、「左だろ?」って普通に返してきたんです。
水道橋:「サウスポーだろ?」って意味ね。
細田:その後、僕が何も返せないでいたら、「あ、観てるよ」って言って、「2、3回観てるね。親父に連れられてな。浅草の公会堂で観てる」って言うから、「おぉ……そうですか!!」っていうような、たけし師匠とちょっとしたやり取りがありまして。
水道橋:あれは“よく聞いたな”と思って唸ったよ。感心したし、たけしさんが一瞬にして50数年前の記憶でパッと返したという。
細田:すごいですね。少年時代のことですもんね。
水道橋:あそこの描写については、(「沢村忠に真空を飛ばせた男 昭和のプロモーター・野口修 評伝」の)編集者が「本当ですか、この話?」って言うぐらいの出来事。でも俺は、その現場にいたからね。
細田:何人も見ていましたからね。あとで他のスタッフから「何を聞いていたんですか?」って聞かれましたね。「ボクシングの話をしてたの」って言ったら、「何で他のことを聞かなかったんですか!」とか言う人もいたしね。
水道橋:いや、ボクシングの話の流れがあって聞くならわかるよ。突然、第一声でこれを聞かれて返したたけしさんって、やっぱりすごいなと。あのときに思ったね。
細田:弟子としてどう思いました? やっぱり尊敬ですよね。
水道橋:いや、(その前に)あんなことを突然聞く奴はいねぇ(笑)!
細田:(笑)。「弟子にしてください」って言ってくる人はいるでしょう。あんな感じで。でも聞けてよかったです。
<イベント情報>
「沢村忠に真空を飛ばせた男 昭和のプロモーター・野口修評伝」刊行を記念したお2人の対談イベントが、11月27日(金)に新潮社にて開催されます。取材の舞台裏やこぼれ話、同著には載っていない写真の公開や年表の配布も。詳細は
公式Webサイトからご確認ください。
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来週の「TOKYO SPEAKEASY」のお客様は……
11月23日(月・祝)片桐はいりさん×大九明子さん(映画監督)
11月24日(火)安田大サーカス・クロちゃん×関根勤さん
11月25日(水)宮本亞門さん×ヒャダインさん
11月26日(木)ダチョウ倶楽部・寺門ジモンさん×EXILE、三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE・NAOTOさん
がご来店。一体どんな話が飛び出すのか……!? お楽しみに!
<番組概要>
番組名:TOKYO SPEAKEASY
放送日時:毎週月-木曜 25:00~26:00
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/speakeasy/