本部長・マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。
4月13日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと三井住友DSアセットマネジメント株式会社フェローの宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「“4月からの値上げラッシュ”と“引き下げられた成人年齢18歳”」というテーマでお話を伺いました。
(左から)マンボウやしろ、宗正彰さん、浜崎美保
◆4月の値上げは、あくまでも通過点にすぎない
浜崎:宗さま、今回は「“4月からの値上げラッシュ”と“引き下げられた成人年齢18歳”」についてお話しいただけるということですが。
やしろ:4月からの値上げラッシュということですが、その前からジリジリと色々なものが上がってきていると思います。そして一気に4月からの値上げです。食品関連の値上げが目立つと思いますが。
宗正:小麦から作られる食品が軒並み値上がりしています。カップ麺を含む麺類・パスタ・パンなどは、10パーセント程度の値上げですね。食品関連が値上がりする理由は大きく2つです。1つは原材料価格の高騰で、もう1つが円安です。食品関連は海外からの輸入が多いので、円安が進むと割高になるんですよね。他には、コロナ禍における人手不足や原油価格の高騰が物流費や燃料費に影響しています。
小麦由来の食品以外には、トマトケチャップやトマトソース、ウイスキーなんかも結構値上がりしていますね。ウイスキーは銘柄によって5%から30%と値上げ幅に差があります。酒類の値上げは、お互いに痛いところですね。(笑)
やしろ:ウクライナ情勢のこともありますので、小麦の輸入問題はますます大ごとになるかもしれませんし、今の話で言ったら円安もすごく進んでいるじゃないですか。
宗正:今日(4月13日)1ドル126円台をつけました。この水準は、およそ20年ぶりですよ。アメリカが利上げに転じたっていうことと、日本の景気は別に良くなっていませんから、金利据え置きなので円安・ドル高に進みやすい。
やしろ:お金がドルのほうに流れたということですね。
宗正:そういうことですね。水の流れは高い所から低い所へ、逆にお金は金利の低い国から高い国へ移動します。
やしろ:そして、値上げをせずに価格据え置きでも、実は中身(容量)が減っているものも結構あるような気がするんですけど。
宗正:よくあるケースが袋詰めのお菓子ですとか、調味料。飲み物やお弁当の中身なんていうのもそうですよね。価格はそのまま据え置きで、中身の量で調整することを「ステルス値上げ」っていうんですね。ステルスっていうのは隠れてとか、こっそりなんていう意味があります。業界用語というか、マーケティング用語ですね。
経済学的には「シュリンクフレーション」といいます。シュリンクっていうのは縮小という意味で、そこから来ています。ただ、今の時代は中身をこっそり減らすと、後でそれが分かったときには、SNSの炎上など大変なことになりますから。
やしろ:でも結構ありますよね。あれ? 昔より小さくなってるなとか。
宗正:SNSの炎上リスクは、今では企業経営の一大リスクです。実際に中身を減らすときには、最近ではホームページであらかじめ開示したり、売り場に注意書きがあったりすることが増えましたね。
やしろ:本当にこっそりは減ってきたと。そして、これだけ色々なものが値上がりしていますが、当分の間、値上がりはこれ以上続かないと思っても大丈夫ですか?
宗正:そう思いたいですが、そうはいかないでしょうね。実は、この4月から値上げされたものの多くは、今年の年初あたりで既に予定されていたものばかりなんです。
やしろ:急遽ではないんですね!
宗正:ええ。既に発表済みのものが多いんです。例えば小麦の価格を1つ取っても、年初の頃よりも今のほうがさらに値上がりしています。世界的な小麦の産地はロシアやウクライナですからね。
年初って、ウクライナ情勢が今ほど本格化していなかった時期ですよね。そこから後のほうが小麦価格は上がっています。3月に入って以降は、1ドル10円以上も円安・ドル高が進みました。今後も円安の進みやすい状況は続くと思いますね。
日本国内で消費される小麦粉のおよそ9割が海外からの輸入です。輸入小麦は政府がまとめて買い付けて、国内の製粉会社に売り渡す仕組みです。つまり、値上げのタイミングも同じということになります。
やしろ:ということは、これからさらに色々なものが値上がりしていくと考えて生活したほうが良いですね。
宗正:4月の値上げは、あくまでも通過点にすぎないと覚悟しておいたほうが良さそうです。
◆成人年齢18歳引き下げに伴う資産運用関連の変化
やしろ:そして、この4月から成人年齢が18歳に引き下げられました。この引き下げは、どうしておこなわれたのでしょうか?
宗正:理由は大きく3つです。まず1つは、成人年齢18歳が世界的に見ても主流なんですね。国際標準に合わせたということです。2つ目が18歳や19歳といった若い世代が社会活動に参加できるようにしたということ。日本では高校を卒業する年齢ですから、実態に沿った動きということで違和感はありません。
そして3つ目が、若い世代の自立を促す自立支援。選挙権も既に18歳に引き下げられていますので、これも自然に受け止められるかなと思います。成人年齢に関係する民法の改正は、実に146年ぶりなんですよ。前回は明治時代の初期ですから、もっと早くても良かったのではないでしょうか。
子どもの頃には「早く大人になりたい」と思っていましたよね。あれが名実ともに2年早まって実現したっていうことですね。
やしろ:成人年齢は18歳ということになりましたが、飲酒・喫煙などの年齢制限は以前のまま20歳からということですよね。
宗正:これがややこしいんですよね。お酒っていうのは未成年者禁酒法で定められています。タバコは未成年者喫煙禁止法なんですね。今回の民法改正とは関係がない。
やしろ:そもそもの法律が違うっていうことですか?
宗正:そういうことです。ちなみに、競馬などの公営ギャンブルも20歳まではダメです。その一方で、携帯電話や賃貸物件の契約というのは、親の同意がなくてもできるようになりました。
このタイミングで、結婚も男女ともに18歳で統一されましたしね。18歳になれば、親の同意なしで愛する人と住みたいところに住めるということです。
やしろ:それはすごく自由ですね。若い世代の憧れの1つでしょうし。
宗正:ただ、その後の2人の人生が幸せかというと、色々と複雑な要素が絡み合いますからね。それも含めて大人の世界ですっていうことを、私は声を大にして言いたい(笑)。
やしろ:ありがとうございます。そして成人年齢が18歳になり、金融や資産運用関連ではどのような変化があるのでしょうか?
宗正:株式や債券、それから投資信託などを売買するには、証券口座が必要なんですね。18歳からは親の同意なしで、この口座を開くことができるようになりました。自分の意思で自由に、金融関連商品の売買もできます。
それから、投資収益にかかるおよそ20パーセントの税金が、一定額・一定期間で非課税になるNISA口座。これが来年以降は18歳からも開くことができるようになります。資産運用というのは、早く始めれば始めるほど運用期間が長くなりますから、無理して高い運用リスクを取らなくても済むんですよね。そういう意味でも、2年早まったっていうのはすごく良いことですね。
やしろ:成人年齢の引き下げで、若い世代の自由や裁量が広がる一方で、責任も増えるということになりますが。
宗正:これまでは、親の同意なしで契約した取引を後で取り消すことができる未成年者取消権っていうのがありました。当然ですが、18歳や19歳では適用されなくなりました。これも新たな責任の一例ですね。
やしろ:今までの優遇処置みたいなものが、逆になくなるケースもあるっていうことですね。
宗正:未成年者はさまざまなケースで民法によって守られていますからね。金融取引は自己責任が大原則ですが、そこで欠かせないのが金融リテラシーです。金融関連商品には、投資というよりも投機、つまりギャンブルに近いものもあります。これも18歳からできるようになりました。
金融リテラシーと言えば、この4月からは高校の家庭科で金融教育が必須になったんですよ。これは資産運用業界に身を置いてきた私としても、長年の悲願でした。実現したことは本当に嬉しいですね。ちなみに私、高校教員の免許もっています。(笑)
やしろ:これは革命的なことですね。実現のタイミングも。
宗正:この「スカロケ資産運用部」も高校生の方に是非とも聴いていただきたい。この番組を聴くことで、自分の身は自分で守る力をつけて欲しいと思います。自由が増えた分だけ、自覚と責任が求められるのは、今も昔も同じですから。
金融取引に限らず、自由を手に入れるということは、そういうことなのかなって、既に大人の私は思うことが多々ありますね。新成人の皆さんには、型にはまらない、枠に収まらない、素敵な大人になっていただきたいと思います。
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<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月~木曜17:00~19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ~)
パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保
番組Webサイト:
http://www.tfm.co.jp/sky/