俳優・石丸幹二がパーソナリティを務めるTOKYO FMのラジオ番組「Grand Seiko THE NATURE OF TIME」(毎週土曜12:00~12:25)。各界で活躍するゲストを迎え、毎週1つのキーワードから“自分を支えている本質”を掘り下げて伺っていきます。
2022年4月のマンスリーゲストは、俳優・藤岡弘、さん。この記事では、「映画と映像作品」について語った4月2日(土)放送の模様を紹介します。
石丸幹二、藤岡弘、さん
今月は、俳優の藤岡弘、さんをゲストにお迎えします。19歳で松竹映画にて主演デビュー。数々の青春映画に出演された後、特撮テレビドラマ「仮面ライダー」で一躍ヒーローになり、アクション俳優として映画界を牽引してきました。
武道家としても知られ、柔道、空手、刀道など、あらゆる武道に精通。また、国内外でボランティア活動も積極的におこなっています。そんな藤岡さんは、いったい何を大切にしているのでしょうか。
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石丸:藤岡弘、さん、これから5週にわたりどうぞよろしくお願いいたします。
このサロンでは、人生で大切にしている“もの”や“こと”についてお伺いしており
ます。今日はどんなお話をお聞かせいただけますでしょうか。
藤岡:今日は「映画と映像作品」についてお話をしたいと思います。
石丸:藤岡さんの俳優デビューは映画ですか?
藤岡:そうですね。松竹映画でデビューいたしました。(松竹映画の)ニューフェイスだったんですが、そこで青春映画からスタートしました。
石丸:何歳のときでしたか?
藤岡:まだ19歳か20歳くらいでしたね。
石丸:ピカピカですね。そもそも、俳優を目指されたきっかけというのは?
藤岡:私は愛媛県の松山で育ったんですが、娯楽というと僕にとっては映画が一番魅力的な存在だったんですよね。
石丸:じゃあ、映画館に結構通って?
藤岡:おっしゃる通り、映画を観たさにアルバイトをして、お金が貯まるとすぐに映画を観に行きました。3本立てとか、深夜興行といって、土曜の深夜から日曜日にかけて夜中ずっと上映していて安く観られるものとかね。
石丸:そういうものがあったんですね。
藤岡:そういうのを狙って観ているうちに、どんどん映画に魅せられてしまって。
石丸:(映画の)何に惹かれたんですか?
藤岡:演じる人の人生に対する向き合い方とか、歴史観や世界観など、いろんな面からワクワクするような、好奇心をかき立てるようなところでしょうか。
侍映画も好きだったので、ちょうど黒澤(明)さんの作品とかに魅せられてね。その当時、日本映画界がものすごく良い時代で、それに引き込まれてしまった。
石丸:ジャンルは問わずにご覧になっていたんですか?
藤岡:もう、問わずに。アメリカ映画はウエスタンものの西部劇がすごかったでしょ。フランス映画なんかも、どんどん(日本に)入ってきました。(ジャン=ポール)ベルモンドとか、ジャン・ギャバンとかアラン・ドロンとかの映画も上映されていましたからね。
石丸:渋い人たちですね。
藤岡:異国の文化にもすごく影響を受けました。
石丸:そんななかで、“自分も俳優になってみたい”という想いが生まれたんですか?
藤岡:田舎ですから、情報が限られていますよね。でも、映画のなかでは民族も国境も越えた世界観がどんどん広がっていて、胸にズシンズシンとくるわけです。いつしか自分のなかで、その(俳優になってみたいという)想いがどんどん強くなってきて、自分の狙いがそこに向き始めて、“アルバイトをしてお金を貯めて(目的の場所へ)行きたい!”という気持ちになりました。
石丸:どこを目指したのですか?
藤岡:“映画を作っている場所の近くまで行きたい”と思ったので、東京を目指そうという気持ちが強かったです。
石丸:映画を観たことが大きな原動力になっているんですね。
藤岡:そこにロマンを感じたんですね。あの頃は、田舎にいると情報も何もかもが非常に狭いんですよね。ところが映画から見る世界というのは、国境も民族も越えたもので、とてつもなくすごい広いわけです。
石丸:それは、昭和何年頃だったんですか?
藤岡:昭和36~38年くらいですね。
石丸:ちょうど(東京)オリンピック前で、いわゆる高度経済成長で日本中が騒いている頃ですね。
藤岡:そうですね。アルバイトで貯めたお金を持って、1人で夜行列車に乗りました。ワイシャツとジーパンで、ナップサックに洗面道具とカメラと武道着。カメラはアルバイト代で自分で買った中古品で、唯一映像とつながっているものなので、それを持って。武道着は、私が青春時代からずっと(武道を)やっていたものですから。それだけで東京へ向かいました。
石丸:すごいですね。
藤岡:着いた当時は、上智大学の芝生で寝ていました。
石丸:え! 野宿ですか?
藤岡:野宿したんですよ。それから友人の下宿をたずねて行って。だから、全てが行き当たりばったりな感じで、何の準備もしないで来ちゃった。
石丸:じゃあ、17、18(歳)くらいのときに、熱意だけで?
藤岡:はい、18ですね。
石丸:“帰ろうかな”と思ったことはなかったんですか?
藤岡:それは全くなかったですね。ただ、怖くて、眩しくて、人の流れは速いし、素敵な女性が歩いているし、車も多いしで、それは田舎とははるかに違う世界でした。
石丸:それこそ映画のなかの世界みたいですよね。
藤岡:そう。別世界ですよ。
次回4月16日(土)の放送も、引き続き藤岡弘さん、をお迎えしてお届けします。どうぞお楽しみに!
<番組概要>
番組名:Grand Seiko THE NATURE OF TIME
放送日時:毎週土曜 12:00~12:25
パーソナリティ:石丸幹二
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/nature/