禁酒法の時代に、こっそり営業していたBAR「SPEAKEASY」。2020年の東京の街にも、そんなひそかなBARがありました。月曜から木曜の深夜1時にオープンする“ラジオの中のBAR”「TOKYO SPEAKEASY」。各界の大物ゲストが訪れ、ここでしか話せないトークを展開するとか、しないとか……。
TOKYO FMの番組「TOKYO SPEAKEASY」6月18日(木)のお客様は、風とロックの箭内道彦さんとシンガーソングライターの高橋優さん。高橋さんにとって因縁の(?)楽曲が、ついに箭内さんの前で披露されることになりました。
▶▶この日の放送内容を「JFN PARK」でチェック!
(左から)高橋優さん、箭内道彦さん
◆最後まで歌わせてもらえなかった楽曲「考える」
箭内:高橋が一緒に聴きたい曲っていうのは、何なの?
高橋:僕が箭内さんと出会って、一番最初に歌わせてもらった曲を聴いて欲しいなと思っていて。2008年の4月くらいだったと思うんですけど、箭内さんを紹介してもらって。で、箭内さんは、そのときに「考える」という言葉をプロデュースするというか、みんなに提示する企画とでもいうんでしょうかね? 番組のなかでやられていたんですよね。
箭内:テレビで、そういうシリーズの番組があったんだよね。
高橋:そのなかで“考える”っていうことを世に提示していくということで、箭内さんが「考える」という曲を書かれていたんです。作詞作曲・箭内道彦。その番組のなかで、まだ北海道から上京したばかりでデビューするチャンスをつかんでいない僕に、「歌ってもいいよ」って言ってくれて、番組のなかでちょっとだけ歌わせてくれたんですよね。
箭内:そうだったね。
高橋:でも、番組では結果的にオフィシャルで歌う人は、「別の人間にしよう」みたいなことを箭内さんが言い出して(笑)。
箭内:(笑)。そういうことじゃなくて、あれは「男性の声じゃないな」っていうふうに途中で思って「高橋ごめん」って言って。あのときはロマーンズっていうバンドのミカちゃんに歌ってもらったのが番組の結末でね。だから高橋には、すごく悪いことをしたと思ってる。「君じゃないな」みたいな、そういうシーンが映っちゃってね。
高橋:僕がこの曲をスタジオで練習しているところに、箭内さんがガチャッて入ってきて、「高橋、実は」って、「(この歌は)女の子の声が聞こえるから」みたいな感じで。「頼んだくせに、何だよ」、とか思っているんだろうなみたいな感じで、箭内さんが話しかけてくるんですけど。
箭内:本当にごめん。俺も最近、久々にそのドキュメンタリーをちょっと見たわけ。そうしたら、ナレーションが入っているんだけど。
高橋:俺もそれに気づいた!
箭内:國村隼さんだった。
高橋:國村隼さんなんですよね。※國村隼さんは本番組でナレーションを担当
箭内:このバーの隣で、俺らの話を盗み聞きしているのが國村さんでびっくりした。ご縁だなあと思う。
高橋:ご縁ですよね。そんな不思議な繋がりがあって、最後、國村隼さんのナレーションで、番組が終わるじゃないですか。終わって、最後にロマーンズっていうバンドの女性の方が歌って終わると。結局「考える」という曲を、僕の歌では放送してもらえなかったわけですから。そんな10年越し以上の思いがありますよ。
箭内:ある種の復讐劇だ、これ(笑)。
高橋:(笑)。復讐じゃないですけど、結局、箭内さんに聴いてもらえずに終わっているはずなんですよ。この曲は単純に僕、大好きなんです。「考える」っていう曲が。今、コロナ禍のなかでこの曲を聴いたら、すごくまた別の形で聴こえたりするのかな、なんて思って。だから歌おうと思ったんですよ。
◆13年越しの復讐劇とは?
箭内:音源をかけるんじゃなくて歌うの? しかもギターが出てきた。
高橋:だって音源がないんですよ。僕、歌えなかったんだから(笑)。
箭内:(笑)。残っている番組の音源も、國村さんのナレーションが載っているからね。
高橋:そう。番組のなかで僕がちょっと歌っているシーンは、國村さんのナレーションと一緒に流れるんですけど、エンディングで流れるのは、女性の方の歌でオンエアされたので。
箭内:あの番組は、俺と高橋が初対面のところもカメラがたまたま入っていてね。
高橋:入っていますね、そうなんですよ。
箭内:ああいうものが残るっていうのは、映像の力というか、すごいなって思うよね。心のなかだけにしか残らないような日だったのに、あれが撮影されていたっていうのは面白いよね。
高橋:そうなんです。だからカメラに撮られるっていうことに対して、未だに慣れた心地がしないんですけど。「え? こんなこと言ったっけ?」とか思うときがすごく多いし。で、いっぱい反省もしまして。箭内さんに対して、当時すごく良くない態度を取っていたんだろうなって思っていたから。
箭内:そんなことはない(笑)。俺がまず良くない態度を取っていたから。高橋に対して。
高橋:いや、そんなことはないですよ。
箭内:いや、謝り合おう。
高橋:謝り合いながら、ちょっとこの流れで、僕歌っていいですか?
箭内:お願いします。
高橋:じゃあ、作詞・作曲、箭内道彦さんで、10年前に僕が歌わせてもらえなかった「考える」という歌です。
————「考える」を歌い終えて
高橋:ようやく歌えました。13年越しに。
箭内:13年前の高橋優には、きつかったかもしれないけど、こういう13年後が待っているっていうのも、不思議な仕掛けだよね。人生って(笑)。
高橋:こうやって今、箭内さんの前で歌わせてもらったから、あえて言うのもかっこ悪いんですけど、「絶対にいつか箭内さんの前で『考える』を歌ってやろう」と思っていたんですよ。あの日からずっと(笑)。
箭内:(笑)。それが今夜だ。
高橋:だから今夜かなと思ったんですよ。
箭内:イッツ・ザ・タイム。
高橋:事前に「一緒に聴いて欲しい曲を選んでください」みたいな話をいただいて、「箭内さんに聴いて欲しい曲って何だろう」って思ったときに、真っ先にこの曲がバーンと浮かびましたね。ここだって(笑)。
箭内:復讐劇以外の何物でもないじゃない。それ、良いね。
高橋:復讐じゃないですよ。別に恨んではいないんですよ。
箭内:(笑)。復讐って、俺的にはもうちょっと楽しい意味も含めているので。10年以上も経って、変わっていないなという思いもありつつ、すごく変わったなっていう感じもあって、面白いよね。
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7月2日(木)「TOKYO SPEAKEASY」のお客様は、松本伊代さん×紫吹淳さんがご来店。一体どんな話が飛び出すのか……!? お楽しみに!
<番組概要>
番組名:TOKYO SPEAKEASY
放送日時:毎週月-木曜 25:00~26:00
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/speakeasy/