渋谷ゆう子さん、住吉美紀
住吉美紀がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの生ワイド番組「Blue Ocean」。“頑張るプロフェッショナルの女性の素顔に迫る”をテーマに、各界で活躍されている素敵な女性をゲストに迎えて話を伺うコーナー「Blue Ocean Professional supported by あきゅらいず」。
3月28日(月)のゲストは、株式会社ノモス代表取締役、音楽プロデューサーの渋谷ゆう子さん。今回の放送では、これまでの経歴を振り返りつつ、「第94回アカデミー賞」国際長編映画賞を受賞した映画「ドライブ・マイ・カー」(監督:濱口竜介さん、出演:西島秀俊さん、三浦透子さん、霧島れいかさん、岡田将生さん)で流れるクラシック音楽ついて解説しました。
渋谷ゆう子さん
音楽制作プロダクション「ノモス」代表を務める渋谷さん。オーケストラ録音などクラシック音楽のコンテンツ製作をはじめ、音楽家のマネジメントやコンサルティング、コンサート制作、執筆、ラジオ出演など幅広く活躍。月刊誌「音楽の友」(音楽之友社)では、「楽団長フロシャウアーかく語りき『ウィーン・フィル、わが永遠のオーケストラ』」を連載しています。
渋谷ゆう子さん
◆“世界最高峰の演奏会”舞台裏を取材!
住吉:渋谷さんは、もともと音楽業界の方ではなかったんですよね?
渋谷:そうなんです。小さい頃からピアノを習っていて、クラシック音楽は非常に身近なものではあったのですが、音大に行ったり音楽家になったりはしませんでした。以前は人材派遣会社で企画や広報の仕事をしていましたね。
住吉:えっ!? そこからどうして音楽関係に?
渋谷:身内に音楽家がいて、彼らの演奏活動をサポートし始めたのがきっかけでした。そうしているうちに、どっぷりと音楽業界に入ってしまいました(笑)。
住吉:面白い! そもそも音楽が合っていたってことなんでしょうね。
渋谷:そうですね。音楽に触れて仕事ができるのはすごく楽しかったです。それで会社を辞めて、自分で会社を立ち上げることとなりました。
住吉:なるほど。ちなみに3人のお子さんがいらっしゃるそうですが、下の子はおいくつですか?
渋谷:小学生ですね。上の2人は成人しています。
住吉:ええ!? めちゃくちゃお若く見えます。渋谷さんは小学生のお子さんがいるなか、ドイツ、オーストリア、イギリスなど、海外での仕事もバリバリとこなしています。2020年には、チケット代が100万円を超える席もある「ウィーン・フィル・ニューイヤーコンサート」の舞台裏取材をされたそうですね。
渋谷:はい。もともと、とある指揮者の方から「ウィーン・フィル・ニューイヤーコンサート」のチケットをいただいて、最初はお客様として行かせていただく予定だったんです。でも、せっかくこうした仕事をしているので、「どうせ行くなら舞台裏を取材させてほしい」と直談判しました(笑)。
ウィーン・フィルハーモニーの「ニューイヤーコンサート」の録音現場に潜入された渋谷さん。左は、「Austrian Audio」CEOのマーティン・ザイドル氏
住吉:その感覚はわかりますけども、それを実際に実現されたのってすごいことですよ。記事を拝読しましたが、知らないことばかりでした。
渋谷:ありがとうございます。
住吉:舞台裏ではチョコレートのお菓子を勧められるそうですね?
渋谷:「チョコレートを食べながら一緒に仕事をしよう」と(笑)。
住吉:世界中から注目を集めているコンサートですから、相当大変なんでしょうけども、そういった“遊び心”を持ってお仕事に向かわれているんですね。「一緒に音楽を楽しもう」という気持ちが伝わってきますね。
渋谷:緩急が素晴らしいなと思いましたね。裏方の方たちのプロフェッショナルぶりはもちろん、緊張もきちっとしながらリラックスもしていたので、素晴らしい収録現場でした。
住吉:素敵ですね。
◆担当銀行員が“国際的な仕事のチャンス”を教えてくれた!?
住吉:お仕事上、大きな転機になった出来事がフランス・カンヌであったそうですね?
渋谷:はい。2015年に、降って湧いたような形で音楽業界の見本市「MIDEM(ミデム)」に出させていただきました。もともと、そのような見本市があること自体知らず、国際的なエキシビションは大きなレーベルさんが参加されるものだと思っていたんです。「小さなレーベルでも出る機会があるよ」と、うちの銀行の担当者さんが教えてくださったのですが、それが開催の1ヵ月前でした(笑)。
住吉:へええ!
渋谷:その話を聞いて、「MIDEM」に飛び込んで行ってしまいましたね。
渋谷さんの大きな転機となったのが、毎年フランス・カンヌで開催されていた「MIDEM」への参加(2015年)。50年以上の歴史を誇る、音楽ビジネス最大の展示会です
◆映画「ドライブ・マイ・カー」で効果的に使用されている音楽とは?
住吉:ここで1曲お届けしたいのですが、せっかくなので音楽プロデューサーである渋谷さんのおすすめを教えてください。
渋谷:第94回アカデミー賞で『国際長編映画賞』を受賞した映画「ドライブ・マイ・カー」のなかで印象的に使われている、ベートーヴェン作曲「弦楽四重奏曲第3番ニ長調作品18-3」第1楽章「アレグロ」です。
住吉:村上春樹さんの原作を映画化したのが「ドライブ・マイ・カー」ですが、渋谷さんは村上さんのファンなのでしょうか?
渋谷:大ファンです。
住吉:映画も既にご覧になって、クラシック音楽の導入の仕方に感銘を受けたとお聞きしました。
渋谷:非常に効果的に使われていたと思います。ベートーヴェンの弦楽四重奏は、ベートーヴェンの耳が聴こえなくなりはじめ、遺書を書いて死ぬつもりだったところを「やっぱり生きてみよう」と頑張った矢先に書きはじめた楽曲なんですね。
村上春樹の作品には、どれも“死と再生”というか、根本的なテーマとして「もう一度生き直そう」があると思うんですね。それがベートーヴェンの生き方とリンクしているので、(映画を観ていて)「ここに、この音楽を持ってきたのか!」と思いました。
住吉:映画監督とか音楽担当の方が意識して使ったんでしょうか?
渋谷:村上春樹さんの作品自体にも「よくベートーヴェンの弦楽四重奏曲を聴いた」という記載があるんですよ。
住吉:なるほど! この楽曲を映画作品に導入したことで、世界への架け橋となった可能性もあるのかしら?
渋谷:そうですね。ベートーヴェンが苦悩を乗り越えた音楽家というのは世界的に認知されていることだと思うので、受け入れやすい部分はありますよね。
住吉:「ドライブ・マイ・カー」のなかで、他にも「光っているな」と感じたクラシック音楽はありましたか?
渋谷:はい。(西島秀俊さん演じる)主人公の奥さんが心の闇を抱えているのですが、普段の状態と心の闇という二面性を表現するシーンで、モーツァルトの「ロンド ニ長調 K.485」を持ってきたんですね。これは村上春樹の作品にはなかったので、この楽曲のチョイスに非常にドキっとしました。
住吉:どういう意味でドキっとするんですか?
渋谷:ロンドと呼ばれているものは、同じメロディー、フレーズを何度も繰り返す、踊りの楽曲なんです。でも、モーツァルトの「ロンド ニ長調 K.485」に関しては、普通のロンドの作り方とは違っていて、テーマを先々にきちんと展開していっているんですよ。ただ、ぐるぐる同じものを回して踊るのではなく、ストーリーを繋げていくロンドなんですけども、「ここに持ってきたのね!」ってところで使われていました。
住吉:クラシックファンならではの楽しみ方! そういう楽しみ方もできる映画なんですね。
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聴取期限 2022年4月5日(火)AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:Blue Ocean
放送日時:毎週月~金曜9:00~11:00
パーソナリティ:住吉美紀
番組Webサイト:
http://www.tfm.co.jp/bo/
特設サイト:
https://www.tfm.co.jp/bo/aky/