放送作家・脚本家の小山薫堂とフリーアナウンサーの宇賀なつみがパーソナリティをつとめるTOKYO FMの番組「日本郵便 SUNDAY’S POST」。8月28日(日)の放送では、時代小説家で江戸料理・文化研究所代表の車浮代(くるま・うきよ)さんをゲストに迎えて、お届けしました。
(左から)小山薫堂、車浮代さん、宇賀なつみ
江戸料理の特徴について、「“濃口醤油の料理”なんですよ」と車さん。というのも、「(千葉県の)野田や銚子で濃口醤油が作られる前は、上方、和歌山が醤油の発祥の地と言われていて、いわゆる“下り醤油(西日本で作られて江戸に運ばれてきた醤油)”なんですね。廻船ではるばる運ばれてきて、当時は高価で、庶民はまず醤油なんて使えなかった」と言います。
そんななか、「野田や銚子で安い濃口醤油ができたときに、輸送は隅田川を下るだけなので、安価で手に入るし、“煎り酒(いりざけ)”という、それまで手作りされていた調味料と違って、腐らないということで料理文化が花開いていった」と説明します。
車さんいわく、“江戸前の四天王”と称される食べ物は、鰻、天ぷら、そば、鮨の4つで、「濃口醤油なしに(江戸の食文化は)発展していなかったことが伺えます。日本料理のルーツが京都にあるとすれば、日本のお惣菜、おかずのルーツは、江戸にあると考えていいと思います」とキッパリ。
「きんぴらごぼうにしても、お煮しめにしても、今や日本に濃口醤油のない家庭はないと思う」と言い、「それは参勤交代ですとか、商人の出張とかで、全国に江戸の食文化が広がって定着していったので、『江戸料理』という言葉がなくなってしまったということですね」とその背景を説明します。
そんな当時の人たちの食生活はというと、関西ではお昼にお米を炊くのに対し、江戸では朝に炊いていたそうで、「江戸の成人男性は、驚くべきことに1日5合ものお米を食べていたんですよ」と車さん。
「日本人は、炭水化物をエネルギー化する酵素がほかの民族より多いんですね。飛脚や駕籠(かご)かきなどの肉体労働者も、にぎり飯2つであれだけの距離を移動していました。(日本人には)炭水化物のエネルギー化に優れているDNAがあるということですよね」と話します。
現在、食生活や食文化も大きく変わり、糖質ダイエットでお米を食べないという人もいますが、「本来、日本人の体に合うのはごはんをちゃんと食べて運動することですね。幕末に日本に来た外国人たちが、日本人の体は背が低くて足も短いけれども、『ギリシャ彫刻のように素晴らしい筋肉がついている』と感嘆したんですよね。それはやはり食文化によって形成されているので、見習うべき食生活だったと思います」と力を込める場面も。
また、車さんは外食文化についても言及。戦国時代までは、「(食べることは)糧でしかなかったので。一般の平民にとっては、生きるために食べるという感じだった」と言います。
そして、1657年に「明暦の大火(めいれきのたいか)」という江戸の大半を焼き尽くした大火事があり、そのときに江戸城も天守閣も焼け落ちてしまいました。復興に向けて、近隣からも人が集められ突貫工事がおこなわれるなか、「お昼に(ごはんを食べるために)いちいち家に帰っていてはやっていられないので、工事現場の周りに屋台が出来始めたんです。そこから、屋台で多くの人たちが外食というものを楽しみ始めると、次第に外食店も出来始めていきました。あと、戦(いくさ)がなくなりましたから、食を楽しめる時代になったんです」と時代の変化を語ります。
車さんによると、江戸時代には現在で言うところの「ミシュランガイド」のような料理屋番付もあったそうで、宇賀は「平和な時代になって、お勤めする人ができたことで、外食文化が花開いていったということなんですね」と感じ入っていました。
ちなみに、車さんは今年、「江戸っ子の食養生」(ワニブックスPLUS新書)と「江戸の料理本に学ぶ 発酵食品でつくるシンプル養生レシピ」(東京書籍)の2冊を発刊しており、この日は、後者に掲載されているレシピのなかから、車さんが料理した2品をスタジオに持参していただきました。
まず1品目は、「炒り豆腐」。車さんによると、本来はごま油で豆腐を焼き、その上に青のりソースを乗せるのですが、夏ということで今回は冷奴のスタイルにアレンジ。ごま油と醤油で炒めた青のりを冷奴の上に乗せるだけ。
宇賀は、早速ひと口味わってみると「おいし~い! ごま油のいい香り♪ 夏らしいですね!」とご満悦の様子。
夏仕様にアレンジした「炒り豆腐」
そして、2品目は「磯菜卵(いそなたまご)」。この料理は、いわゆる「江戸版ポーチドエッグ」で、本来はトロトロとしたやわらかな仕上がりですが、この日は持ち運びなどの都合もあり、崩れないように硬めに仕上げてきたそうで「煎り酒という、醤油ができるまで各家庭で作っていた調味料なんですが、お酒と梅干しと鰹節を煮詰めて作る、ポン酢のようなあっさりとした味わいがするものをかけて、海苔を上からかけて食べてください」と車さん。
濃いめの味わいとなっており、お酒のおつまみとしてもピッタリで、ちびちびと食べるようなメニューなのだそう。
江戸版ポーチドエッグの「磯菜卵」
卵を箸で割ってみると、半熟の黄身がトロリと流れ出てきて歓喜の声を上げる小山と宇賀。口に運んだ小山は「ん~っ! 卵の甘みと梅の酸味、海苔の香ばしさが三位一体となって、ものすごくおいしいです!」と絶賛していました。
次回9月4日(日)の放送も、どうぞお楽しみに!
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<番組概要>
番組名:日本郵便 SUNDAY’S POST
放送日時:毎週日曜 15:00~15:50
パーソナリティ:小山薫堂、宇賀なつみ
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/post/