手島千尋アナウンサーがパーソナリティを務めるTOKYO FMの番組「防災FRONT LINE」。今回の放送では、山梨県富士山科学研究所・主幹研究員の吉本充宏(よしもと・みつひろ)さんに、見直しが進んでいる「富士山噴火直後の住民避難」についてお伺いしました。
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あなたは今年の3月から、富士山噴火直後の住民避難に関する見直しが進んでいることをご存知ですか? 富士山火山防災対策協議会は、溶岩流が発生した場合の対応について、今までは「車で避難する」としていましたが、「一般住民は原則として近くの避難場所まで徒歩で避難」という方針を打ち出しました。これは、去年3月に改訂された富士山ハザードマップが関係しています。
速やかに避難が求められる範囲を、溶岩流が噴火してから3時間以内に到達する可能性のある地域に設定。すると、ある問題点が浮き彫りになりました。今回の避難計画の検討メンバーでもある吉本さんは、その背景についてこう説明します。
「今までは、噴火する直前に第2次対象エリアにいる方は逃げていただく、ということで決めていました。(それが、今回の改訂で)同じカテゴリーでもハザードマップのエリアが変わったので、もともと(避難対象者が)1万数千人だったのが、11万人ぐらいもの人々が避難しないといけない、ということになりました。
ただし、10km先まで移動してくださいということではなくて、溶岩流から離れる距離は1km、2 kmぐらいで大丈夫です。(11万人が)車で移動すると渋滞が起きてしまいますが、徒歩だといろいろなルートがあるので、1km、2 kmぐらいだったら“徒歩のほうが早い”という結果が出てきました。ですので、一旦退避する場所までは歩いて逃げていただきたいということで、大きな変更をしたところです」
一斉に車を使うと、渋滞が発生して逃げ遅れてしまう可能性もあります。そのため、危険な範囲から徒歩で離れ、必要に応じて一時避難場所からバスなどを使って集団避難してもらうなど、今後、避難時の行動の見直しが進んでいくと言います。また、想定火口範囲、大きな噴石や火砕流などの影響のある範囲は「噴火前に全員で避難」とする方針です。
このように避難計画の見直しが進むなかで、吉本さんは私たちに溶岩流の特性を事前に知ってほしいと訴えかけます。
「溶岩流は急斜面の場合、比較的(流れてくるスピードが)早いです。早いと言っても時速30km/hぐらい。だんだん傾斜がゆるくなってくると、人間が歩くスピードよりも遅くなり、傾斜がなくなってくると1日で数百mも進まないこともあります。ただ溶岩流は、富士山の場合1200℃ぐらいあって非常に高温なので、それが(木々などに)触れると当然火事になります。速度はゆっくりですが、破壊力はけっこうあるので必ず逃げるようにしてください」
最新のハザードマップによると、溶岩流は神奈川県の7つの市や町にも到達すると言われています。過度に恐れる必要はありませんが、溶岩流について正しい知識を知っておくことは大切です。ハザードマップや避難計画の詳細については、山梨県や静岡県の自治体サイトから見ることができます。
<番組概要>
番組名:防災FRONT LINE
放送日時:毎週土曜 8:25~8:30
パーソナリティ:手島千尋
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/bousai/