放送作家の高須光聖が、世の中をもっと面白くするためにゲストと空想し、勝手に企画を提案していくTOKYO FMの番組「空想メディア」。4月17日(日)の放送は、Netflixオリジナルシリーズ「新聞記者」の監督・藤井道人さんが登場しました。
(左から)藤井道人さん、高須光聖
◆クドカンに憧れて脚本を学んだ大学時代
高須:今はおいくつですか?
藤井:35歳です。
高須:お若いですねぇ。映画は昔からやりたいと思っていたんですか?
藤井:実は全然思っていなくて、(映画は)人生で2本しか製作したことがないんです(笑)。3歳から18歳まで剣道をやっていたんですが、剣道の推薦で(受験した大学に)落ちてしまったんですね。それでどうしようかなと思ったときに、僕は英語と国語しかできなかったので2科目で入れる学校を探したら、それが芸術学部だったんですよ。
高須:なるほど。
藤井:しかも“クドカン(宮藤官九郎)さんと同じ学校じゃん!”と思って入試を受けたら合格しました。なので、脚本コースという監督志望ではないところに入りました。
高須:じゃあ、脚本はずっと書かれていたんですね?
藤井:そうですね。今でも脚本家志望です。
高須:えぇ!? 今はもう映画監督じゃないですか。
藤井:監督ってけっこう大変なんですよ(笑)。脚本家が大変じゃないっていうことではないんですけど。
高須:でも分かります。僕もいくつか映画の現場に行かせていただきましたけど、脚本のト書き(登場人物の動作や行動を指示する部分)に書いてあることで制作側が大きく動いてね。
藤井:例えば「雨が降っている」って書いてあるだけで、もう大騒ぎですよ(笑)。
高須:ただ、そこに必然性があったらやるしかないですもんね。
藤井:そうなんです。なので“ドMじゃないとできない仕事だな”って思いますよ。
高須:だよね。
◆人生で一番緊張した役者は?
高須:(撮影現場で)苦手なタイプってどんな方ですか?
藤井:すごく明確にあるのが、ややこしい人とか面倒くさい人はすごく好きなんですよ。その映画に懸けてくれるから。
高須:すげぇ!
藤井:だから僕は、毎日電話がかかってきても大丈夫なタイプです。
高須:それぐらいしてくれるほうが、作品に対しての思い入れが強いってことですね。そういう人と一緒に仕事をやっていきたいと。
藤井:そうですね。逆に一番緊張するのが、お願いしても無反応の方です。
高須:そういう人っているんですか?
藤井:けっこういます(笑)。例えば、柄本明さんはデビュー作に出てくださった方で大尊敬しているんですけど、(撮影現場では)目を見て全然しゃべってくれなくて、(説明をしても)反応がないから“嫌われたかな”と思っていたんですよ。だけど、公開日の舞台挨拶では別人のように話しかけてくれたんですね。「初監督って大変だよな」ってすごく労ってくれたんですよ。
高須:なんで現場では反応がなかったんでしょう?
藤井:それはきっと、ご自身のなかにポリシーがあるんだと思います。
高須:ある程度の緊張感を持って仕事に挑みたいって気持ちがあったのかな。
藤井:かもしれませんね。なので、人生で一番緊張した俳優は柄本さんです。
◆映像編集者が現場に行かない理由
高須:音楽を考えるのって迷いません? 映像に音をあてたほうがいいのか、クライマックスでどんな音をつけるのかとか。作っているときからなんとなく自分の音のイメージってあるんですか? それとも、できあがってから音楽を考えるんですか?
藤井:僕は、できあがってから“ここに音をつけたほうがいいのかな”って考えます。音のチームといつも一緒なんで「どう思う? いると思う?」ってすぐに聞いちゃいます。
高須:音って考えていくうちにどんどん分からなくなりません? 最初は必要だと思ってつけたはずなのに、後になって邪魔だと感じたりすることもあります。できあがりが良いほど悩みますよね。
藤井:悩みますし、自分のなかで腑に落ちるまでに時間がかかりますよね。
高須:編集はどういう形でやるんですか?
藤井:インディーズ時代はずっと自分で編集をしていたんですけど、30歳になったときからは、同い年の編集技師がずっとやってくれています。
高須:編集技師の方に「だいたいこうだな」と荒く編集してもらって、それからチェックですか?
藤井:いえ。編集は全部彼に委ねています。
高須:えぇ!?
藤井:僕はあーだこーだ口出しするだけで。だから、すごくいい相棒です。あと、彼のなかで“現場には絶対に行かない”って決めているんですよ。
高須:なぜですか?
藤井:「“みんながこんなに頑張っているものをカットできない”というリスペクトの気持ちが湧いてくるから」と言っていました。
高須:そうかぁ。本を読んでいると“この台詞はいらないな”“この場面はいらないな”って思うことがありますよね。僕も“こうなるだろうな”って思って書いた部分をズバっとカットされることがあるんですよ。
最初は“あれ?”って思うけど、後で“これで成立しているか”って思うんですよね。でも、自分が書き上げたものだから愛情があるんですよ。俺っていつも書いたものは全部形にしたくなるんですよね。
藤井:それはそれの良さがありますけどね(笑)。
<番組概要>
番組名:空想メディア
放送日時:毎週日曜 25:00~25:29
パーソナリティ:高須光聖
番組公式Facebook:
https://www.facebook.com/QUUSOOMEDIA/