作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMの音楽番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。3月27日(日)の放送は「村上RADIO~春よ来い、春待ちソングズ2022~」をお届けしました。
今回のテーマは「春待ちソングズ」。村上さんが、春を待ち受けるのにふさわしいと思える音楽を、自宅にあるレコードやCDの中からセレクトしてオンエア。村上さんの解説とともにお届けしました。この記事では後半1曲と“本日の言葉”について話した概要を紹介します。
◆Donald Fagen「Springtime」
この番組のテーマソングを毎回演奏してくれている、ドナルド・フェイゲンさんが、1993年にリリースしたアルバム「カマキリアド(“KAMAKIRIAD”)」に入っている「Springtime」を聴いてください。
1966年春のイースター休暇を、女の子と一緒にたっぷり楽しんだっていう思い出を語る、ノスタルジックな内容なんだけど、例によってヒップにぶっ飛んだ歌詞なので、読解は困難をきわめます。作詞作曲はドナルド・フェイゲン、プロデュースはウォルター・ベッカー、トランペットを吹いているのはランディ・ブレッカー。
このアルバムは、いわゆるコンセプト・アルバムで、主人公が近未来の世界で「かまきり号」という蒸気自動車に乗ってドライブするという、凝りに凝ったストーリー展開になっています。アルバム・タイトルの「カマキリアド」、日本語の「かまきり」とホメロスの「イリアッド」を組み合わせた造語です。全体のストーリーは難解で今ひとつ理解しづらいけど、音作りはさすがに隙なく手が込んでいます。聴いてください。ドナルド・フェイゲンの「Springtime」。
<収録中のつぶやき>
このドナルド・フェイゲンのCDはバーゲンコーナーの常連で、本当に100円で買えます。みんなドナルド・フェイゲンが「The Nightfly」を出して、何年かぶりにアルバムを出すというんで、喜んで買ったんだけど、がっかりしてみんな売っちゃった。売れたんですよ、結構。でも100円コーナー、僕はわりと好きなんですけどね。
◆The Red Garland Trio「Spring Will Be a Little Late This Year」
今日のクロージング音楽は、レッド・ガーランド・トリオの演奏する“Spring Will Be a Little Late This Year”。今年の春は少し遅くなりそうだね、という曲です。ベースはポール・チェンバース、ドラムズはアート・テイラー。レッド・ガーランドはプロ・ボクサーをやりながらピアニストになる勉強をしていたという、ちょっとユニークな経歴の人ですが、そういうファイター的面影は、演奏にはあまりうかがえませんよね。
今日の言葉は、ジョン・ル・カレの、わりに最近の小説に出てきた素敵な比喩です。どの小説だったか出典が思い出せないんだけど、もし知っている人がいたら教えてください。こんな文章でした。
「彼はひどく落ち着かない気持ちになった。まるで、たくさんの人がそれぞれ揺り椅子を揺らせている部屋に入り込んでしまった、尻尾の長い猫のように」
情景が目に浮かびますよね。揺り椅子に尻尾を轢かれたら、猫はたまらないですものね。その落ちつかない気持ち、実感としてよくわかります。そうですよね、猫山さん?
ニャ~(猫山)。
こういう比喩、僕は結構好きなんです。それではまた来月。
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<番組概要>
番組名:村上RADIO~春よ来い、春待ちソングズ2022~
放送日時:3月27日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/