住吉美紀がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの番組「Blue Ocean」。2月5日(水)の放送では、NPO法人ファザーリングジャパン会員で、パパ向け情報サイト「パパコミ」編集長の杉山ジョージさんがゲストに登場しました。
住吉美紀、杉山ジョージさん
◆パパはママのおつかい扱い!?
住吉:杉山さんは放送作家のお仕事をされていて、今3人のお子さんがいらっしゃいます。実は、ご自身もお子さんが生まれてからは仕事をしながら、基本的に主夫を続けられているとか。
杉山:そうですね。妻がフルタイムで働いているんですけど、極端に家事・育児が苦手なタイプなんですよ。なので、どちらかというとこっちがやったほうがいいかなっていうのもあり、働き方もわりとフレキシブルなので、僕のほうでやるっていう選択になりました。それが11〜12年くらい前かな。長女が保育園の年長の頃ぐらいですかね。当時は“イクメン”って言葉もなかったです。
住吉:当時に比べると、男性の育児の意識や環境はよくなったと感じられますか?
杉山:まるっきり変わりましたよね。公園を歩いていてもベビーカー押してるお父さんがたくさんいるし、抱っこしてるお父さんもいっぱいいますし。
僕がやってた頃って、たとえば検診あるじゃないですか。僕は1人で子供を連れていってたんです。そうすると必ず「お母さんはどうしたんですか?」って訊かれるんですよ。お母さんが来る前提で考えているから。僕は自分で母子手帳も書いてるし、予防接種とかもやってるんですけど。最終的には、検診が終わったあとにも、「成長具合・発達具合大丈夫ですよ、ってお母さんに伝えてくださいね」って言われるんですよ。おつかいですよ。
住吉:えー! それはちょっと、まじめに取り組んでる男の人にしてみれば、ショックというか。寂しい思いというか……。
◆環境大臣・小泉進次郎議員の育休取得について
住吉:みんなが作ってきた目に見えない常識みたいなものを、今一生懸命変えようという人が、だいぶ増えてきたということで。多分、変えようとしている人の1人は、小泉進次郎さん。育休取得が大きなニュースになっています。取り方も含め賛否も出ていると思うんですけど、この決断をどんなふうに捉えていますか?
杉山:そうですね、いろんなところに取材したり話を聞いたりして、まあ当然進める側の人たちにとってみれば、うれしい出来事。この人じゃなきゃこんなに話題にならなかったし、議論が進むっていう意味では、とてもいいことだったりするなと。
で、海外のデータになるんですけど、やっぱり誰かが新しいことを始めるとき、それが上司であればあるほど、影響が大きくなる。部下に比べたら2.5倍効果があるとされているんですね。そういう意味でいえば、トップの大臣が(育休を)取ってくれたっていうのは、波及効果としてはとても大きくて。それと、彼が働きながら育休を取るっていうのも、そういう制度がないところもあるので、それをもっと彼が制度化してくれたらいいな、とは思いますね。
◆育休を取る男性の3割が“取るだけ育休”!?
住吉:今年に入ってこんなデータも出ていて、問題視されています。「育休を取る男性のうち3人に1人は、“取るだけ育休”」。つまり、育休を取っても子育てにほとんど参加しない、極端にいえば寝てるとか! これ本当なんでしょうか?
杉山:本当だと思いますよ。でも、3人のうち2人が(子育てを)やってるって事実のほうが大事なんじゃないかな。取ってなければ、100%がやってないことになってしまうので。
そもそも育休を取っている期間って、去年のデータでいうと、だいたい6割が5日間未満(しか取っていない)じゃないですか。たとえばですよ、ものすごく忙しい職場に、5日間限定の新人のヘルプが入ったときに、この人をどうやって働かせます? もう忙しくて、「じゃあもう見てて!」ってなるでしょ。「さわんないで!」って。
実際はそのあと(継続して子育てを)やることによって変わってくる部分っていうのはあると思うんですけど、(取るだけ育休をしている)3割の人っていうのは、果たして何日間(育休を)取ってる人なのかっていうね。
住吉:たしかに2日間だけとかだったら、フルタイムで働いたことがある人ならわかると思いますけど、そりゃ疲れて寝てますよね(笑)。仕事で例えると一気にわかりやすいですね。
杉山:(仕事と育児は)同じ側面がかなりあると思うんです。社会に出たら役職がある人も、家に帰ったら最初は新入社員なので。そのスタンスは大事なのと、新入社員を育てるときに「お前できねえな」ってずっと言い続けたら、やる気もなくなっちゃうしやらなくなるので、それもちょっと考えていただきたい。
◆日本企業にも変化の兆しが!
住吉:企業も少しずつ変わってきてると思うんですけども、日本の企業で変わってきてるよっていう例ってありますか?
杉山:例えば「積水ハウス」っていう会社は、社長が北欧に別件で視察に行ったときに、「これだけ男性の育児が進んでいるなら、日本でもできないのか」ってことを考えて。子供が3歳になるまでの間、男性が1ヶ月取得できて、給料も1ヶ月分出る“イクメン休業制度”っていうのを作って、今それを、対象となる全男性社員が100%取得しています。
あとは真逆の会社もあって。「アクトインディ」っていう、子育て世代のお出かけ情報紹介サイト「いこーよ」を運営してる会社があるんですね。ここは、育休を取った人が今まで1人しかいない。
住吉:えーっ!
杉山:育休を取らなくても(仕事が)できる制度があって。“コアタイムなし、フルフレックス、テレワークOK”っていう会社なんです。ITに関わっている会社なので、かなりフレキシブルにできるんですけど。例えばお子さんが受験とか、インフルが流行りましたとか、雪が降りましたとかそういうときは、社長から全員に向けて「今日来ないでいいですよ。せっかくなので雪を楽しみましょう!」っていうメールが来るんです。
あとは、「サイボウズ」っていう会社は、社長自身が育休を取っていて。お子さんが生まれてから、1年ぐらい時短勤務していたんです。社長が! 要は、子供を迎えにいく時間に合わせて「俺、帰っちゃうからね!」っていうのをやってた。
住吉:トップの人がやると、随分(社員も)取りやすくなりますよね。
◆海外から遅れを取る、日本の風土
住吉:ほかにも取材されたなかで、海外の事例でおもしろいものなどはありますか?
杉山:日本の育休制度はドイツを手本としてつくられているんですけど、そのなかで特に印象的だったのが、「マイクロソフト」っていう、世界中にある会社。日本にもありますよね。ここ、世界中で育休に関する制度を一律で敷いているんですよ。でも、日本人だけとらないんです! 世界中にある制度なのに、日本人だけはどうしても取らない。
だから制度の問題だけではなくて、風土っていうのが影響していると思うんです。育休の取材をしていると、みんなあらゆるところでブロックがかかってる。それこそ「役に立たなそうだから取らないでください」って妻も出てくるし、一番厳しいのは親ですね。親に「育休取るんだけど」って相談したら、「何言ってんの! あんたは働きなさいよ!」って(言われると)いうのは、一番多く聞きますね。
住吉:ワンチームですね、流行りの言葉で言うと。どの世代も全員が「いいじゃん!」って言える意識。
杉山:あとは、こういう育休議論でいくと、専業主婦がかなり置いていかれがち。「(奥さんが)専業主婦なんだから、取らなくていいだろう」っていう文脈が、今世の中にはすごく溢れてるけど、全然そんなことはなくて。むしろ専業主婦のほうが、子供と対峙するしかない。「私、仕事もしてないから、これやらなきゃいけない」とか、追い込まれる方はもっときつい部分もあるので。そこはやっぱり防御しなきゃいけないかな。
<番組概要>
番組名:Blue Ocean
放送日時 :毎週月~金曜9:00~11:00
パーソナリティ:住吉美紀
番組Webサイト:
http://www.tfm.co.jp/bo/