本部長・マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。
9月14日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと三井住友DSアセットマネジメント株式会社フェローの宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「“1ドル140円台”の日本経済と2022年度“最低賃金”」というテーマでお話を伺いました。
(左から時計回りに)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保
◆賃金はトータルで見れば上がり始めている
浜崎:宗さま、今回は「“1ドル140円台”の日本経済と2022年度“最低賃金”」についてお話いただけるということですが。
やしろ:宗さまが1年前から言われていた通り、ついに1ドル140円台に突入して、そこからの動きも速いですし、止まりませんね。
宗正:1年前のちょうど今の時期、1ドルおよそ110円でした。今日(9月14日)は1ドル144円くらいまで進んだ後に、143円辺りまで戻していますけど、わずか1年間で3割も円安が進んだということです。
やしろ:1年間で3割も! すごい!
宗正:為替市場は複雑な要素が日々絡み合って、その水準や方向性が決まります。数ある投資対象の中でも、最も動きを当てるのが難しいのが為替と言っても良いくらいです。ただ、この1年間の円安ドル高の最大の要因は、2つの国の金利差。つまり、アメリカと日本の金利差でしたから、これは実に分かりやすくて、急速な円安の進行について自信を持ってお話してきました。
物価高と景気の回復を背景に、アメリカは1年前から金利を上げる準備をしていましたが、一方の日本は変わらず据え置きが濃厚でした。金利の低い円を売って、金利の高いドルを買う円安ドル高の動きが強まるだろうと、そんな話をこの番組ではしてきましたね。
やしろ:このタイミングでドルを買う一般の方も増えていると思いますけど、1ドル150円までいく可能性はいかがですか?
宗正:アメリカの物価高と金融当局の発言を踏まえれば、方向としては円安に進むと思います。24年ぶりの1ドル145円が先ずは予想されます。問題はそこから先ですが、為替の予想は日々の状況をトータルで見ながら「ここからさらに円安に進む、いや一旦は戻る」みたいな、そういう考え方をします。アメリカの現状を見る限りでは、さらなる利上げがされて円安が進むと思いますが、落ち着く水準はその時々で変わってきます。
この「スカロケ資産運用部」は毎月第2水曜日の生出演でお届けしていますが、今まさに世界が注目する月に一度のアメリカの消費者物価指数の発表日と重なっています。それを受けて日本の株式市場や為替市場が動くので、いつもドル円の話で盛り上がるわけですよね。
やしろ:ありがとうございます。いつもベストなタイミングで。円安はしばらく続きそうだということですね?
宗正:まあ、その方向だと思いますね。
やしろ:円安が続くということは、物価の上昇も続くということでしょうか。
宗正:円安が続けばそうなります。ここに来て急速に進んだ円安は、タイムラグを置いて商品価格に反映されます。つまりこの先も、物価の上昇を覚悟せざるを得ない状況です。
一方で、物価高は「悪」だと思われがちですが、景気が上向くためには必要な要素でもあるんです。実際に政府日銀は物価の上昇率2%をずっと目標にしてきました。先進国の多くが目標としているのが、この2%の物価上昇なんですね。
モノの価格が上がって、企業の業績が上向いて、働く人の賃金が増えて、個人消費が拡大すれば、景気も上向くっていうのがバラ色のシナリオ、目指すべきサイクルなんです。ところが今は物価高が先行して、賃金の上昇が追いついていない、ここが一番の問題です。2%の物価上昇はこのサイクルが上手く回る適度な水準ということです。
やしろ:でも、賃金も多少は上がり始めているんですか?
宗正:トータルで見れば上がり始めています。ただ、私が色々な番組でそういう話をすると「いや、うちの会社は上がっていない」とか「横ばいです」っていう声が出るのですが、数字を確認できる上場企業などでは上がる傾向にありますね。
ただ、全体的に消費者物価指数の上昇率を大きく上回って上がっているかというとそこまでではない。賃金に関しては、もう1つの見方があって、毎年夏に水準が決まって、10月から自治体ごとに順次適用になる地域別最低賃金というのがあります。
こちらは、全国平均の時給換算で961円。昨年度比で31円のアップです。3.3%の上昇率で、実は過去最大なんですね。最低賃金法で定められる地域別最低賃金は、労働者のセーフティーネットで、これより低い賃金は無効になります。じゃあなぜ過去最大の上げ幅、上昇率かというと、やはり各自治体が今の物価高を重視して対応した結果です。
やしろ:ここを踏ん張れば、もしかしたら好転していくかもしれないと。ここを逆に踏ん張れないと、きついところじゃないですか?
宗正:そうなんです。物価の上昇スピードが速すぎるんですよね。この国では過去30年(物価が)上がっていなかったので、初めて経験する人が多い。物価の上昇スピードも上がり幅も現実感がないのかもしれませんね。
やしろ:デフレ、デフレできていたから。
宗正:はい。戸惑っている人が多いんですよね。一度上がり始めた物価は、しばらくの間は上がり続けると思っておいたほうが良さそうです。
◆“資産運用”というものが今こそ必要
やしろ:ラジオの前のリスナーや、我々もそうですけど、やれることってなんなのかといったら、まず節約があります。節約はこれから大事になりますか?
宗正:物価が横ばいのときであれば、お金を使わないことは節約、つまりお金を減らさないことにつながりますが、物価が上がる状態で使わないでいると、お金の価値は目減りするばかりです。今は低金利で預金利息もほぼ付きませんから。
やしろ:そうなんですよね。
宗正:物価の上昇を大きく上回る賃金のアップ、収入の増加が今すぐあれば別ですが、そうではない。最近の物価の上昇率は、消費税増税の影響を除けば、30年ぶりの上昇幅です。だから今こそ“資産運用”というものが必要なんです。
やしろ:僕たちがここ数年間で頑張って働いて、なんとか貯めた100万円・200万円が、何年後かには物価が上がれば上がるほど、その100万円・200万円の価値が下がるってことですよね。
宗正:その通りです。今こうして話をしているときも減っています。
やしろ:いやー、やめてください。怖いんですよ、これ。
宗正:ところがですよ、このコーナーは「スカロケ資産運用部」ですからね!
やしろ:そうですよね、そこですね。まさに今なんですね!
宗正:そういうことです。ただ、この国では投資をしない人のほうが圧倒的に多い。
やしろ:分からない人が多いからだと思うんですよ、僕は。
宗正:投資をしない人に理由を聞くと、最も多い答えが、本部長がおっしゃった「方法が分からない」というもの、もう1つが「損をしたくない」。この2つが多くのアンケートで2トップです。その気持ち、確かに分かります。ただ、何もしなければ、投資リスクを取らなければ現預金は目減りする一方だということを忘れてはいけません。
この4月からは、全国の高校で金融教育が必須科目になりました。岸田政権も「資産所得倍増プラン」を掲げています。そのスローガンは「貯蓄から投資へ」なんですよね。
やしろ:「貯蓄がある人が前提だと思うなよ」みたいな話もありますけども、どのような施策が?
宗正:詳細は年内に発表される予定ですが、たぶんNISA(少額投資非課税制度)の拡充や個人型確定拠出年金、いわゆるiDeCoの規制改革なんかが検討されていると思います。ただ、先ほどから申し上げている通り、一番大事なことは“個々人の意識の転換”なんですよ。今やらないと大切な現預金や資産が目減りしちゃいますよって、そういうことです。
やしろ:本当にそうだと思います。
宗正:もう1つ必要なことは、それを実行に移すための金融リテラシーの向上ですね。
やしろ:はい。この番組のリスナーの金融リテラシーに関しては、宗さまに引っ張り上げてもらうしかありません。
宗正:これまでこの国では、投資リスクを銀行や証券会社などの金融機関が取ってくれていました。私たちが現金を預けて、利息や利益をつけて返してくれるということは、銀行や証券会社などが投資リスクを取って運用して返してくれていたわけですよね。
これからは、個人が投資リスクを取るスタイルへと大きく転換する、そんな時代になります。自分のお金、自分の資産ですから。この番組を聴いていただいて、ぜひ“資産運用”を始めてみてください!
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<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月~木曜17:00~19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ~)
パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保
番組Webサイト:
http://www.tfm.co.jp/sky/