ミュージシャン、デザイナー、作家、俳優、職人など、異なるフィールドを舞台に活躍する“ふたり”が語らうTOKYO FMの番組「三井ホーム presents キュレーターズ~マイスタイル×ユアスタイル~」。
今回のゲストは、桐島かれんさん(モデル)×内田也哉子さん(文筆家)。ここでは、幼少期について語り合いました。
内田也哉子さん、桐島かれんさん
桐島さんのお母さまは、作家の桐島洋子さん。アメリカ人の男性と恋をして未婚の母となった洋子さんは、仕事が忙しく、留守も多かったそうです。
一方、女優の樹木希林さんと、ミュージシャンの内田裕也さんの一人娘として生まれた内田さん。いわゆる家族団欒を知らずに育ったというお二人は、いったいどんな幼少期を過ごしていたのでしょうか?
*
内田:私は人に興味があるので、自分が生きられなかった時間を、人を通して疑似体験する。それは読書もそうなんだけど。
桐島:なんでそんなに人に興味を持つの?
内田:ティーンエイジャーになるまで、ずっと孤独な時間を過ごしてきたから。離婚はしてなかったけど、母は(事実上の)シングルで、役者という仕事を持っていたからほとんどいなかったし、鍵っ子で放任主義だったけれども基本、ご飯は食べさせる。
当時ではちょっと早かったけど、マクロビオティック(穀物や野菜など日本の伝統食をベースとした食事)のような(ご飯を作ってくれた)。玄米と一汁一菜を無農薬の野菜で食べさせておけば、それが愛として伝わると(考えていたんだと思う)。
あと、何時に帰ってこようが、誰とどうしていようが1回も聞かれたことはないし、勉強しなさいなんて一度も言われたことがない。
桐島:同じです。
内田:だから逆に不安になっちゃうのね。
桐島:わかる。
内田:自分で自分を管理することが身についた。例えば、学校に関してはずっとインターナショナルスクールに通っていて、日本語が不安だから「途中から日本の公立学校に行ってみよう」と全部自分でプランニングしたし、フランス語も好きだったから、(フランス語が公用語の1つである)スイスに行ってみようとか。
そういうことを、もし、母が手厚くやってくれていたら、(自分は)怠け者だから何にもしなかったと思うけど、常に危機感があったから。自分しか頼れるものがなくて。
桐島:自分で切り開いていくしかない。だから、レールのようなものが全くなくて。それは自由だけど、一番過酷なのよ。普通は家庭があれば、例えば、ボーリング場のガーターに落ちないように親が守ってくれるけど。だから不安はあったと思う。
19歳くらいのときは“グレー色の時代”というか、鬱々としていて。そのときに古典文学を読んで、それに救われたかな。それが今でも(自分の)“引き出し”になっている。だから「私は何者?」という感情はないんだよね。自分探しは理解できない。自分は自分じゃん。
内田:そこに気が付けているかれんさんがすごいと思う。世の中には、自分探しのワードがあふれているけど、結局、確固たる自分はこんな形で、こんな内容で……というものは、形があるようでないものだから。
きっと、そこを追求する必要はなくて。「be here now(今このとき、この場に存在する)」でないけど、今を生きることが結果、命を閉じるときに振り返ったら、「これが私だった」ということだものね。
桐島:そういうこと。だから、生きているときは探せないよね。也哉ちゃんは、いつもいろんなクエスチョンを持っている。でも、それは自分探しではない感じ。ブレる・ブレないというのはあるけど。
内田:いつも揺れてはいるけど(笑)。
桐島:揺れていないと人は(心が)ボキッと折れてしまうから。でも也哉ちゃんはそうでなくてバランス感覚がいい。
*桐島かれんさんの著書「大人のおしゃれ手帖特別編集 桐島かれんの緑のある暮らし Life with Plants」は、宝島社より発売中です。
*内田也哉子さんと脳科学者の中野信子さんが家族をテーマに語り合った「なんで家族を続けるの?」(文春新書)が、文藝春秋より発売中です。
*「2020年本屋大賞」を受賞した凪良ゆう(なぎら・ゆう)さんのベストセラー小説を、広瀬すずさん・松坂桃李さんのW主演で映画化した「流浪の月」。内田也哉子さんも出演する同作は、現在全国ロードショー中です。
▶▶番組Webサイトでは、この記事の放送内容をPodcastで配信中です。
次回8月5日(金)放送のゲストは、水野良樹さん(いきものがかり)×狩野英孝さん(お笑い芸人)です。お楽しみに!
<番組概要>
番組名:三井ホーム presents キュレーターズ~マイスタイル×ユアスタイル~
放送日時:毎週金曜 17:00~17:25
ナビゲーター:田中麗奈
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/curators/