2022年3月21日(月・祝)に放送されたTOKYO FMの番組「TOKYO FM ホリデースペシャル オトナラジオ~新成人から成人への100の質問~」(パーソナリティ・グランジ 遠山大輔)。4月1日(金)から「成人」年齢が20歳から18歳に引き下げられましたが、今年新成人となるリスナーたちの不安や疑問に、TOKYO FMのパーソナリティをはじめ、さまざまな分野のプロフェッショナルたちが回答とエールを贈りました。ここでは、元陸上選手の為末大さんがリスナーからの質問に答えていきます。
為末大さん
答える人:為末大さん(元陸上選手)
Q.「しなければいけないこと」と「したいこと」、どっちを選ぶべき?
「大学受験を来年の春に控えているのですが、志望校選定の際、家庭の事情で家族から国公立大学を志望するように言われ、建前では国公立大学を志望しています。しかし自分は、行きたい私立大学があります。そこで質問なのですが、今までいろいろな選択をしてきた成人の皆さんは、『しなければいけないこと』と『したいこと』のどちらを選ばれてきましたか? これまでどんな選択をしてきましたか?(リスナーからの質問)
A.“自分のしたいこと”を温めて持っていてほしい
「しなければいけないこと、したいことのどちらを選ぶかという話ですが、実は大人になると思ったよりも悩まないと思うんです。『しなきゃいけないことをしている』ってだけで、自分の居場所があると感じられるところもあって、そこの責任感を持って生きていくということが肌になじむんでしょうね。家族を持つとか、会社でそれなりのことをやっていくというのはそういうことなので、もしかすると今の皆さんだからこそ悩めることのような気がします」
さらには、自分の中に“自分のしたいこと”を温めて持っておいてほしいと話す為末さん。“自分のしたいこと”は30パーセント増しくらいで、周囲にアピールしていくこともおすすめだと話します。
「『しなきゃいけない』と思っていたけれど、実はしなくてもよかったということに大人になってから気付いて後悔する、ということもたくさんあるので、『しなきゃいけない』と思いこまないためにも、『したいこと』は強めに出してほしいなと思います。どうせ大人になったら本当に『しなきゃいけないこと』が増えて面倒くさいのですから(笑)。今は『したいこと』を選んで、徐々に変えていくのがいいんじゃないでしょうか」
Q.なぜ戦争をするの?
「今、ロシアとウクライナの戦争が起きています。さまざまな要因が重なって起こっていることだとは分かっています。しかし、過去に多くの犠牲を出した戦争の歴史があるのにもかかわらず、なぜいまだに軍事的な争いがなくならないのかが疑問です。なぜ大人は戦争をするのでしょうか? そして悲惨な歴史からなぜ何も学ばないのでしょうか?」(リスナーからの質問)
A.『まだいいか』の段階から議論に参加、いろんな意見を戦わせておくことが大事
「ぜひ『三体』という小説を読んでほしいです。作品中に『宇宙空間で他の宇宙人に会ったとき、殲滅(せんめつ)したほうがいい』という考え方が出てきます。相手が敵か味方か分からない、相手が自分たちよりも優れているかが分からない、相手の成長のスピードが自分たちより早いかもしれない……など、いろいろ考えた結果、『話し合うよりも攻撃したほうがいい』というロジックなんです」
宇宙空間が題材の小説のため、実際の地球で起こっている戦争とは違うとしつつも「相手が考えていることがよく分からなくなってくると、最悪を想定して『守らなきゃ』という考え方になり、結果として『攻撃をしたほうが合理的だ』という着地をしてしまう」と説明。
さらに為末さんはもう1冊「茶色の朝」という本をリスナーに勧めます。とある街である日「茶色以外のものを持つこと」が禁止されましたが、それが「茶色以外のペットを持つこと」まで広がり、主人公は過去に茶色以外の犬を飼っていたことから罪に問われ……というストーリーです。
「そのときになって初めて、主人公は自分が対象になったと気づくんですが、誰も助けてくれなくて、警察がドアをノックしている。『どうすればよかったのか?』というお話ですが、この『茶色』ってナチスドイツの色(のメタファー)なんです。
戦争を防ぎたいと思ったとき、民主主義の国においては『自分にはまだ関係ないかな』と思う段階から議論に参加して、いろんな意見を戦わせておく(ことが大事)。『まだいいか』と思っていると、気がついたときには、もう自分たちの声は届かない範囲に押しやられてしまう。皆さんがみんなで議論をして、その状態を保っておくこと自体が、戦争への抑止になると私は考えています」
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番組では他にも、松任谷由実さん、山口一郎さん(サカナクション)、ハマ・オカモトさん(OKAMOTO’S)、片岡健太さん・小川貴之さん(sumika)、坂本美雨さん、住吉美紀さん(フリーアナウンサー)、谷山紀章さん(声優・GRANRODEO)、大谷亮平さん(俳優)、箭内道彦さん(クリエイティブディレクター)、茂木健一郎さん(脳科学者)、鈴木おさむさん(放送作家)、小山薫堂さん(放送作家)、平山夢明さん(作家)、カツセマサヒコさん(作家)、斎藤幸平さん(哲学者)、高濱正伸さん(花まる学習会代表)、そしてもちろんパーソナリティの遠山大輔さん(グランジ)と、総勢18組19人の成人の諸先輩方が「成人」に関する悩みや疑問に真摯に答えていきます。TOKYO FMの音声アプリ「AuDee」でも聴くことができます!
<番組概要>
番組名:TOKYO FMホリデースペシャル オトナラジオ〜新成人から成人への100の質問
放送日時:3月21日(月・祝) 11:30~16:50
パーソナリティ:遠山大輔(グランジ)
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/otonaradio/