住吉美紀がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの番組「Blue Ocean」では、新型コロナウイルスの感染対策に取り組むWHO(世界保健機関)の健康危機管理プログラムシニアアドバイザーの進藤奈邦子(しんどう・なほこ)さんにリモートインタビューを実施、その模様をお届けしました。7月15日(水)は「日本はいまどういう状況で、日本の対策はどう評価されているか」についてお話を伺いました。
写真はイメージです
◆現在は第2波がジリジリ続いている状況
住吉:東京の感染者数が、ここ最近100人200人超えと増えている状況で心配なのですが、進藤さんは客観的に見て、日本のこの状況をどう見ていますか?
進藤:とにかく今はすごくPCR検査数が増えていると聞いていますので、陽性患者さんが増えてくるのは、そういう意味もあるのかと思います。重症患者さんや死亡者が劇的に増えたという話は聞いていないので、検査する戦略の問題も多少反映されているのかなと。
住吉:第2波とはまだ思わなくてもいいのでしょうか。
進藤:いろいろな見方があるかと思いますが、わたしは日本は中国から入り込んできた第1波を抑え込み、ヨーロッパや北米から帰ってきた人たちによる第2波が今ジリジリ続いていると私は見ています。国立感染症研究所で患者さんから採れたウイルスを分析した結果、もともと武漢から入ってきたものは、もう完全に消えています。
◆隠れた感染を見つけて抑え込む、そして海外対策を
住吉:今の日本の対策のやり方……3密を避ける、マスク、手洗い、これについてはどうですか?
進藤:3密を避けることは続けていただきたいです。日本は初期にクラスターにフォーカスを絞った作戦が功を奏して、非常に上手く閉じ込められていたと思います。これからは、隠れた感染がジワジワ広がっていく可能性があるので、それを早く見つけて抑え込むことと、国際的な渡航が可能になると、また海外からウイルスが入ってくる可能性があるので、どのようにコントロールするか、この2つだと思います。
これからは、コミュニティのなかで、どれくらい実は潜んでいるのかというのを探すような検査戦略があっていいですし、今、世界的には、糞便のなかにウイルスが少し出るという情報があるので、下水の水を検査したときにコロナが検出されると、多分そのコミュニティにはコロナ患者さんがいるのではないかという調査ができるので、それもやってみたらどうかと言われています。
◆SARSと鳥インフルエンザの経験がアジアの強み
住吉:コロナの死者数が、日本とアジアでは圧倒的に少ないということに関して、以前に進藤さんはメディアでも「SARSの経験が活きているのではないか」とおっしゃっているのを私は聞いたのですが、理由はそのことだけなのか、もしくはそれ以外もありそうなのでしょうか?
進藤:はい。日本をはじめ、アジア各国では、鳥インフルエンザやSARS、また韓国では、中東呼吸器症候群といった同種の感染症のアウトブレイクを既に何度も経験していたので、十分な対策やプランができていたことが1番の成功の原因だと思います。
コロナは、トップダウンではなくて本当に1人1人が自覚を持った衛生行動というのが大事です。なので、欧米では「パンデミックが来るかもしれない、来たらどうする」という考え方が、人々のなかになかったのだと思います。
国民のなかに浸透しているかどうかというのはすごく大事なことで、こっぴどく鳥インフルエンザやSARSにやられた中国とか台湾とか韓国・ベトナム・タイなどは、本当にしっかりやっていますよね。日本もその近くに来ていて、みんな情報には気を配っていると思います。日本人は手を洗ってうがいをする習慣があるし、衛生観念が素晴らしいですよね。
マスクも市民権を得ているじゃないですか。とにかく薬局とかコンビニで高機能マスクが買えますし。日本初のすごい衛生行動の1つが、実は「咳をしている人がマスクをする」ということなんです。感染源を減らすという意味で、咳をしている人がマスクをするというのは、実はあまり海外にはなかったことです。大気汚染が酷いからするとか医療現場で感染防御のためにする、というのはありましたが。
◆感染してしまった罪の意識は負わないで
進藤:コロナウイルスのパンデミックを防ぐには、本当にすべてのレベルでみんなが参加しなくてはいけません。そしてそれを支えるコミュニティがちゃんとあるかということですね。地域のコミュニティはもちろん学校や会社もコミュニティですよね。
感染した人は、日本人だとすごく恥の意識が強くて「私、感染しちゃった。もしかして、あの人にうつしているかも」とすごく心配になってしまうと思うのです。でもそうではなくて、「あなたも誰かから感染してしまった、本当にかわいそうでしたね。でも他の人に、なるべく広げないようにしましょう。同じ部屋にいた誰さんと誰さんは、自宅待機しましょう」と、そうやって淡々とやってもらいたいのです。
感染してしまった、という罪の意識を負ったりすると、絶対に上手くいきません。香港とかシンガポールとかSARSで苦しんだ人たちは、自分たちがそういう行動に出たら、国全体が大変な目に遭うというのをわかっているのでどんどん言うし、言ってくれた人に対して、コミュニティや政府がちゃんとサポートするということも大切です。ちゃんと家にいてもらうためには、ご飯や生活必需品が、ちゃんとそこに届いているか。その人たちがちゃんと近接者とコミュニケーションができているのかというところも見ていく必要があります。
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<番組概要>
番組名:Blue Ocean
放送日時:毎週月~金曜9:00~11:00
パーソナリティ:住吉美紀
番組Webサイト:
http://www.tfm.co.jp/bo/